高度な彫金技術を分かりやすく

情熱をもって伝統工芸の後継者育成

山森彫金塾

 (有)日本ジュエリークラフト(山森利康社長)は、日本独自の技法である彫金の技術を広めようと平成163月に「山森彫金塾」を創設したが、平成174月にJR御徒町駅前にあるリューツウ本店ビル2Fに移転した。

 山森利康氏は、名人と謳われた師匠で彫金家の父「蒼山」(本名、山森利直氏)から彫金の技法を学び、「雄山」の号を与えられた二代目。塾を創設するにあたり「ものづくりは道具作りから」をモットーに本物のプロの技術者を養成するため、自分に合った道具を作る基本からタガネの技法を取り入れたジュエリー作りまでの指導に情熱を傾けている。現在40名ほどの塾生がいるが、インターネットのホームページを見て応募してきた人も多く、彫金を趣味にしている人からプロの技術者まで幅広い層が学んでいる。

 講義内容は@基礎コースA初級コースB中級コースC上級コースの4コースがあり、さらに高い技術を学びたい人のために専門課程が用意されている。

 <通常コース>

 基礎コース=タガネによる直線、曲線彫り。初級コース=カタカナの文字を彫る、タガネの研ぎ方。中級コース=ひらがな、アルファベットを彫る。上級コース=漢字を彫る。

 <専門課程>

 和彫り=毛筆文字を彫る。洋彫り=ペン文字を彫る。彫り留め=タガネを使う石留め。美術彫り=打ち出し、タガネ彫り、金銀の壷に彫刻を施す。

 受講時間は、午前の部(10時〜1230分)、昼の部(1時〜330分)、夜の部(6時〜830分)があり、月曜日の授業は夜の部のみ、水曜日の授業は午前、昼、夜の部すべて、金曜日の授業は夜の部のみ、土曜日の授業は午前の部のみとなっていて、それ以外の空いている時間帯は“予約制の貸し工房の部”としている。

 <入塾手続き>

入会金=(初回のみ支払いで永久会員となる)30,000円。月受講料=受講時間2時間30分、月4回、20,000円。チケット=受講時間12時間3010回分、50,000円。(チケットの場合は予約が必要になる。少人数制のために月受講が優先)

 入塾する時に用意する道具=タガネ(毛彫1ミリ、片切1.2ミリ各1本ずつ)、おたふく(金槌、12ミリ1本)、カニコンパス(1本)、スチールスケール(1本)、モデリングコンパウンド(1枚)。これらの道具は同塾が10%引きで斡旋してくれる。材料と消耗工具は随時塾生が買うことになっている。

 1時間303,000円(銅板1枚、ソフトワックス1枚含み)で体験入塾ができる。これは予約制になっているので事前に申し込むとよい。

山森利康氏(号・雄山)のプロフィール

 山森利康氏(号・雄山)は、父親で彫金家の利直氏(号・蒼山)に厳しく伝統工芸の技術を教え込まれた。この伝統技術を生かして現代ジュエリーに新風を吹き込み、デ・ビアス社主催のダイヤモンド・デザイン・コンテストC部門で一位入賞(昭和53年)を果たしたのを皮切りに、プラチナギルド主催のプラチナ・デザイン・コンテストや日本貴金属文化工芸品協同組合主催のJJCコンテスト、東京ジュエリーショウの創作ジュエリーコンテスト、(社)日本ジュエリー協会主催のジュエリー・デザイン・アワードなどに次々と入賞。平成15年には東京都優秀技能者・東京マイスターに選ばれている。

 山森氏は昭和48年に(有)日本ジュエリークラフトを設立したが、現在ではジュエリーデザイナーの奥様と二人三脚で「マダムカズコ」や「雄山」というブランドジュエリーを発表している。「私どもは職人であると同時に芸術家でもあるので、伝統を守りながら新しいものを作り出していく使命があります」と山森氏。

父君への思い滲ませ、彫金塾開設

 「海外では、カメオといえばイタリアとイーダーオーベルシュタイン、彫金といえば日本と言われますが、この伝統技術は徳川時代の鎖国政策で海外からの技術がごくわずかしか輸入できなかったがゆえに編み出された日本独自の技術です。これは使い方次第では世界に通用するオリジナリティを持っている新鮮な技術なわけです。いま“和のブーム”と言われていますが、この素晴らしい伝統技術を見直してみていただきたい」(山森氏)。

 残念ながら、時間をかけた修練の必要な彫金技術は衰退していこうとしている。これを何とかしようと立ち上げたのが「山森彫金塾」だが、これには師匠である父君への思いも滲む。山森氏はその父君について次のように述べている。

 「父は大正5年(1916)に富山で生まれ、大阪の名匠・駒井海堂しに師事、その後、上京して山田勝康氏から現代彫金を学びました。昭和26年に山森貴金属彫金工芸社を埼玉県に設立。文化組合の理事長を勤めたり、伝統工芸の後継者を育てるため日本彫友会を結成したり、伝統工芸界の維持・発展と後継者育成に情熱を注いだ人でした。昭和46年には日本橋三越で伝統工芸展を、48年には新宿小田急百貨店で蒼山個展を開き、同じ年に東京都知事賞を受賞しています。私は父から一生の財産である伝統技術を教えてもらったことに心から感謝しています」

 父君「蒼山」は、昭和61年(1986)に他界したが、その意志と技術はしっかりと息子「雄山」に引き継がれていると言っていいだろう。

 山森彫金塾/〒110-0005 東京都台東区上野5-22-4 リューツウ本店ビル2F (有)日本ジュエリークラフト内 TEL03-3832-8700 FAX03-3833-1132 ホームページ(http://www.juku-yamamori.com


以上、柏書店発行「TOKYO JEWELLERS」第44号掲載予定記事。 柏書店の了承を得て掲載しました。